女性の健康クリニック 小山嵩夫クリニック

ご予約・お問い合わせ TEL:03-6280-6201

アクセス

TOP > 更年期情報 > ホルモン補充療法(HRT)の長期投与 -HRT5年以上、60歳以降の投与について

更年期情報

ホルモン補充療法(HRT)の長期投与 -HRT5年以上、60歳以降の投与について-

小山嵩夫 更年期と加齢のヘルスケア Vol.7-2 pp43 2008

小山嵩夫(こやまたかお)
小山嵩夫クリニック院長

 2008年7月中旬の全国紙数紙に、日本産婦人科学会、日本更年期医学会のHRT指針として、更年期症状改善のためのHRT投与期間は5年以内、60歳未満が望ましいとする記事が掲載された。記事の見出しがホルモン補充療法とされていたため、HRTは5年以内、60歳未満と受け取った人達が多かったと思う。
HRT長期投与の結論からいえば、更年期症状の改善に目的を限定すれば、日本産婦人科学会、日本更年期医学会の指針は妥当といえる。但しHRTの長期投与というテーマであれば5年以内、60歳未満に制限することは正しいとはいえない。
 国際閉経学会(IMS)、北米閉経学会(NAMS)がこれらの点について、すでに学会見解をだしているのでコメントしてみたい1)2)。まず投与期間については、制限を設けてはならないとしている。60歳以降の投与については、投与目的、メリット、デメリットについて十分なインフォームドコンセントをとった後、担当医と服用者との間で症例毎に決めればよいとしている。
 ほてり、発汗、いらいら、動悸などの更年期症状であれば、適切に治療すれば5年以内に軽快するのが普通であり、60歳以降もそうした症状が続くのであれば、女性ホルモン(エストロゲン)欠乏以外の原因も考える必要があろう。しかしHRTの投与目的が骨粗鬆症を防ぎたい、皮膚、粘膜の乾燥を遅らせたい、元気で若々しく積極的に生きたいなどであれば、60歳になって突然HRTを中断することは不自然であり、適切な医学的な管理のもとに継続していくことが自然である。
 今回の記事は、更年期症状におけるHRTと、閉経後のQOLの維持改善を目的としたHRTとが明確に区別されて書かれていなかったために生じた混乱といえるが、影響が大きいため、マスコミの報道には十分注意を払っていきたいものである。

【文献】

1)The International Menopause Society : IMS updated recommendations on post-
menopausal hormone therapy. Climacteric10 : 181-197,2007
2)The North American Menopause Society : Estogen and progestogen use in postmeno-
pausal woman : July 2008 Position Statement of The North American Menopause
Society. Menopause15 : 584-602,2008

ページの先頭へ